| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-051 (Poster presentation)
青森県では西岸に沿って対馬暖流が、東岸に沿って親潮が流れている。西側では潮位差が小さく、年間を通して潮間帯となる場所が存在しないことが両者の大きな相違点である。そこで本研究では、青森県の西岸から東岸までの潮間帯群集を比較することで、海流や潮汐が潮間帯群集に及ぼす影響を検討した。
青森県沿岸の岩礁帯13地点で潮間帯生物の分布調査を行った。海水面から岩礁頂に向かってラインを引き、それに沿って10cm四方のコドラートを順次設定してその中に含まれる底生生物の個体数を記録した。
群集の類似性を明らかにするため、各地点の底生生物の密度をnMDSで解析し、群集の二次元配置を行った。その結果、青森県沿岸の潮間帯群集は西岸、東岸、陸奥湾湾口の3つのグループに分類された。
また、生活様式の違いと潮位差との関係を明らかにするために、各生物の個体数と海水面の季節変動の関係をGLMMで解析したところ、潮位差は移動性生物にはあまり影響しなかったが、固着生物には強い影響を及ぼしていることが示唆された。
西岸グループは多くの南方系の種の出現と貧弱な固着生物群集によって特徴づけられ、暖流と小さな潮位差の影響を強く受けていると考えられた。東岸グループは南方系・北方系双方の種の出現と発達した固着生物群集から、暖流と寒流の両方と大きな潮位差の影響を強く受けていると考えられた。湾口グループは内湾環境を好むタマキビLittorina breviculaが指標種とされ、潮汐、海流とは異なる要因を反映していることが示唆された。以上のように、潮汐は生活様式を介してそこに生息できる生物を制限し、海流は群集の種組成にかかわることで、異なる潮間帯群集の形成に寄与していることが明らかになった。