| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-053 (Poster presentation)

河川及び陸上捕食者の餌資源利用へのダムの影響

*赤松史一, 槙島みどり, 田屋祐樹, 中西哲, 萱場祐一(土木研)

日本の河川上流は急勾配であり、そこに治水・利水目的で設置されているダムは、急勾配地形に止水域を形成し、下流の流量変動の安定化、土砂供給の減少などに寄与している。このようなダムは、陸域を含めた河川生態系の捕食者の餌資源利用にどのような影響をもたらしているのだろうか。本研究は、ダムの集水域面積が100 km2以下の比較的小規模のダム群を対象に、ダム上流と下流の底生魚類及びクモ類の餌資源利用を、炭素安定同位体比解析を用いて評価した。その結果、底生魚類の水生昆虫利用は、ダムの上流と下流で有意差はなく、90%以上が水生昆虫に依存していた。対して、陸上の捕食者であるクモ類は、ダムの上流よりも下流で水生昆虫を多く利用していた。水生昆虫の生物量は、ダム下流側で増加しており、底生魚及びクモ類の個体重も、ダム下流側で増加していた。ダム下流調査地の河床材料は、ダム上流に比べて粗粒化していた。河床材料の粗粒化は河床材料の安定性や礫間空隙を増加させるため、このような環境を選好する水生昆虫が増加した可能性がある。水生昆虫の生物量増加にともない、底生魚類及びクモ類の水生昆虫利用の機会が増え、成長に寄与したものと考えられる。


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