| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-054 (Poster presentation)
野生動物感染症における防除対策
浅川満彦 (酪農学園大学獣医学群獣医学類感染・病理学分野/兼 野生動物医学センター)
様々な動植物に、多様な病原体が寄って、宿主-寄生体関係の曼荼羅を構成している現実世界がある。そして、これら全ての組み合わせに科学的興味が注がれているのではなく、社会的に大きな問題になる可能性を秘める病原体の防除に、医学、獣医学、水産学、保全生態学などの目的別の科学分野が存在している。そのような個別的な分野で扱われてきた様々な防除対策全てを、限られたこの場で語り尽くすのは不可能である。本演者が獣医学、特に、野生動物からの事例に偏る傾向があるが、それは、依って立つ学問背景の所以である。
その獣医学では、感染症成立の3要因、すなわちA) 宿主の抵抗性付与、B) 病原体撲滅およびC)中間宿主(intermediate host)・媒介動物 (transmitter, vector)・保因者キャリアー(carrier )あるいはその環境要因などのレゼルボア(reservoir)対策を含む感染経路遮断を防疫(infectious diseases control)という。言うまでもなく、防疫は医学および獣医学分野では数多成書がある程、既に確立された感がある。しかし、自然界に広く生息し、病原体撲滅が極めて困難な植物を含めた野生生物を対象にする保全生態学の分野では、旧来の諸手段に加え、病原体の性状を掴んで、上手く付き合う現実的な方策も防疫に含め、論考した。