| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-103 (Poster presentation)
ツチガエルは特有のニオイがする皮膚分泌物を持ち、この分泌物はシマヘビがエサを飲みこむのを妨げる効果がある。一方、野外で捕獲したヘビに本種を与えると、ニオイを確かめるだけで全く咬みつかない個体と咬みつく個体が観察された。この咬みつき前の差は、ヘビが野外で本種を咬んで飲み込めない経験をした差によると考えられた。実際に、ニオイの効果が無かった野外個体に、本種に咬みつく経験をさせた結果、次の遭遇時に本種のニオイがするエサに咬みつきにくくなった。つまりヘビは本種に咬みついた経験からニオイを学習し、ニオイを知覚するだけで摂食を止めるようになることが示唆された。だが、ニオイそのものに何らかの忌避効果があるのか、それとも、ニオイ自体には忌避効果は無く咬みついて飲み込めない不快感を経験することでニオイを知覚しただけで回避する学習が成立したのかは、明らかでない。
そこで未経験のシマヘビに対して、分泌物のニオイがある条件下で分泌物の味がするエサを食べる経験(ニオイ+味)、ニオイがある条件下で処理していないエサを食べる経験(ニオイのみ)、ニオイの無い条件下で処理していないエサを食べる経験(コントロール)、をそれぞれ行った。予測では、ニオイ+味の経験をした個体は、コントロールやニオイのみの経験をした個体よりもニオイを学習し、ニオイのある条件下でエサを与えてから咬みつくまでの時間が長くなると考えられた。だが結果は、ニオイのみ、コントロール、ニオイ+味の順で時間が長くなり、ニオイ+味とニオイのみの間で差がみられた。コントロールとの差が見られなかった理由として個体の少なさが考えられたが、ニオイのみよりニオイ+味で長くなったことは経験したエサの味が学習に影響したことを示す結果だと考えられた。