| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-106 (Poster presentation)
動物行動における動きのランダムネスは古くから報告されているにもかかわらず、そのランダムネス自体の適応的意義は明らかになっていない。餌探索においては、Lévy walkとよばれる稀に直線的な運動をもつランダムウォークの一種が適応的な採餌行動であることが報告されているが、餌探索においてはランダムネス自体に本質的な意義があるわけではない。動きにおけるランダムネスの生物的な機能の一つは、他個体からの予測不可能性であると考えられるため、本研究では天敵回避行動に注目し、天敵回避におけるランダムネスの意義を考察するための理論的なフレームワークを新たに構築した。直進的な運動は安全圏までの移動時間は短くなるが、予測不可能性が低下する。一方、ブラウン運動のようなランダムネスを有すると予測不可能性は高いが、安全圏までの移動時間は長くなる。これらの、予測可能性と、安全圏までの移動時間のトレードオフによって、多くの動物が自然環境下で示すLévy walkをベースにした中間的な動き方が最適になることを報告する。理論モデルを検証するために、コンピュータのスクリーン上に仮想の逃避するエージェントを配置し、人を天敵として実験を行った結果も合わせて報告し、理論モデルとの対応関係や動きにおけるランダムネスと人の意志決定の関係についても議論する。