| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-111 (Poster presentation)
近年、囚人のジレンマゲームなど進化ゲームにおいて空間構造の効果に注目する研究が数多くなされている。しかし、従来の解析の多くは空間を格子状に区切った離散空間が仮定されている。本研究では、各個体が二次元空間上の自由な位置をとる連続空間を想定し、個体の視点に基づく個体ベースゲームとして従来の進化ゲームを再構築することを試みる。
協力の進化ゲームでは、プレイヤーの基本的な行動として協力と裏切りを想定し、しっぺ返し戦略など直前の経験に応じて行動を変える戦略が協力の進化に深く関わっていることが知られている。従来のしっぺ返し戦略の解析では暗に1対1での対戦を仮定しているため対戦相手は常に同一であり、相手を認識して記憶する能力を考慮する必要がない。しかし現実世界では対戦相手は複数であり、その都度対戦相手が変わる可能性が考えられ、過去の対戦相手を認識し記憶することが協力の進化に深く関わる可能性がある。そこで本研究ではしっぺ返し戦略がとる行動として、直前の対戦で相手にされた手のみを記憶し次戦で相手構わず直前の手を八つ当たり的に繰り出す戦略、つまり従来のしっぺ返し戦略において対戦相手を複数に拡張した戦略と、過去に対戦した相手とその手を記憶し再び相手に遭った時に当時された手を返す戦略、つまり完全な記憶をもったしっぺ返し戦略の2種類の戦略を考える。
プレイヤーが複数の空間ゲームでは、自分と近いプレイヤーと対戦をすることが考えられ、個体の空間分布といった空間構造が進化動態の行方を大きく左右すると考えられる。対戦相手を記憶することが適応度にどのように影響するのかをシミュレーションし、記憶能力の進化が協力の進化に及ぼす影響を解析する。