| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-112 (Poster presentation)
止水環境に生息する魚類や両生類は、遭遇した餌や捕食者が発する音響情報を弁別し、特定の行動を誘発する。このように、一時の音響情報は生物に即時的反応を生じさせるが、一時的でない環境音響は生理状態や形態の変化を生じさせるかもしれない。
エゾサンショウウオ幼生は、止水において同種や他種の両生類と高密度で生活し、表現型可塑性により環境に応じた様々な誘導型形態を示す。共食いをめぐり生じる誘導形態、他種の大型餌(エゾアカガエル幼生)捕食をめぐり生じる誘導形態は、栄養多型として注目すべきものであり、音響情報が形態を誘導させる要因の一部として作用していることが知られている。
止水の高密度生育環境において、他個体の遊泳運動で生じる、恒常的に存在する水中振動は、生物環境に関する音響情報である。我々は、生息環境を模した一定の音響情報をエゾサンショウウオ幼生に供し、形態誘導を調べるための以下の実験を行った。(1)音響処理:両生類幼生の遊泳で生じる振動を模し、水中スピーカーで30Hzの振動を与え個別飼育、(2)餌生息刺激処理:網で仕切りエゾアカガエル幼生を供する(音響+ケミカル+視覚)(3)対象区:個別飼育。
形態データの解析結果から、対照区の個体と比較して、音響処理の個体は防御型的形態を、餌生息刺激処理の個体は攻撃型的形態を示すことが判明した。つまり両生類幼生が遊泳時に発する30Hzの振動は共食いの危険性に対する形態を誘導することが判明した。今後は、(1)この音響情報にエゾアカガエル幼生のケミカル(+視覚)情報を追加することで餌動物に対する形態が誘導されるのか、(2)遊泳時の種特異的な振動数が存在し、エゾサンショウウオ幼生はそれを判別することで形態発現を使い分けているのか調べる必要がある。