| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-113 (Poster presentation)
DNA解析の発展にともない、一夫一妻性の鳥類でも約90%がパートナー以外の子供を残していることが明らかとなった。しかし、このつがい外父性(extra-pair paternity)という現象は、メスにとっての適応的意義など未だ不明な点が多い。適応的意義仮説の一つに、より遺伝的質の良い子を残すためにつがい外交尾をしている、という「優良遺伝子仮説」がある。もしメスが遺伝的質の良いオスとつがい外交尾をしていると仮定すると、性配分理論から、質の良いオスの遺伝的特徴を受け継ぐ利益はメスに比べオスの子の方が高くなるため、つがい外父性の子は、オスに偏ると予想される。そこで本研究では、北海道に生息するシジュウカラ個体群を使い、雛の父性と性比、また親鳥と雛の体重や体サイズを調べ、つがい外父性の適応的意義を検証することを目的とした。
2009,'10,'12年に北海道苫小牧で野外調査を行い、親鳥と雛の計測また、血液採取を行った。その後DNA解析により、合計1160羽の雛の親子判定と性判定を行った。この個体群のつがい外父性率は全体の9.8%(114羽)、また雛の性比は全体でほぼ1:1であった。つがい外父性の雛の性比は一回目繁殖では、オス29羽に対しメス27羽と違いが無かったのに対し、シーズン内二回目の繁殖では、オス36羽に対しメス18羽とオスの比率が2倍となり、大きく偏った。しかし、つがい外父性の有無は親鳥や雛の特徴とは関係が見つからなかった。
これまで、繁殖シーズン内でつがい外父性の雛の性比が変わることを示した例はない。今回の結果は、シーズン内でもつがい外交尾の意義が異なる可能性を示唆している。しかし、親鳥や雛に体サイズなどの特徴に違いがないことから、親鳥は計測された表現型特徴以外(ソング、行動など)から判断しつがい外行動をしていると考えられる。