| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-114 (Poster presentation)

ラジオテレメトリーによる日本産モグラ類の個体間関係

荒井志穂,*横畑泰志(富山大・院・理工学)

モグラ類は排他的な縄張りを作る単独性であると言われているが、地中性で観察が難しく、個体間関係の詳細な研究は少ない。本研究では、行動圏の隣接するアズマモグラ(Mogera imaizumii)のラジオテレメトリーを行い、過去に行ったアズマモグラ(富山市内)およびコウベモグラ(M. wogura、岐阜県美濃加茂市内)各2頭の研究のデータと共に、以下の分析を行った。

2012年11月9日〜17日に茨城県桜川市でアズマモグラを2頭に電波発信器を装着し、15分ごとに位置を記録した。各観察点の位置から求めた両個体の活動重心地点間の距離は81.2mであり、個体間距離の平均値(79.5m)との間に実質的な違いはなかった。美濃加茂の例でも同様であった(活動重心間距離63.8m、平均個体間距離67.5m)。富山の例では活動重心間の距離は75.0mであり、平均個体間距離(83.5m)より短かった。

桜川の例では、片方の個体が巣にいる時刻に他方も巣にいる傾向が認められ(χ2=3.92、P=0.048)、富山でも同様の結果が得られていた(χ2=7.86、P<0.05、河合、2007)。美濃加茂ではそのような関係はみられなかった(χ2=0.22、P=0.64)。

ヨーロッパモグラ(Talpa europaea)では個体間に距離を置くような行動がみられ、互いに避け合うためとされている。また、巣にいる時間が隣接する複数の個体で一致する傾向があり、互いの縄張りを侵されるのを防ぐためと理解されている。富山の例はこれらの知見と一致したが、桜川と美濃加茂の例は一部異なっていた。これらの例では2頭の活動重心が他の例よりも離れていたり、行動圏の間に道路や建物があったためと考えられる。今後さらに例数を増やして検討する必要がある。


日本生態学会