| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-121 (Poster presentation)
多くの種を効率よくカバーするように種の相補性にもとづいて保護区を選ぶ場合、保全対象種の分布データが必要である。しかし、候補地すべてにおいて、保全対象とする種すべての分布データが揃っているとは限らない。一部の分布データのみしか得られていない場合に、それにもとづいて選定した保護区では、保全効率がどの程度低下するのかを調べた。検討には、日本国内全域でほぼ10km 四方の区画ごとに得られている生物の分布データを用いた。データを間引いて残した一部のデータにもとづいて保護区を選び、そこに含まれる種の数を調べた。
種を間引くテストでは、全種のうちランダムに選んだ種のデータを使った場合、全種の3割のデータのみに基づいて選定した保護区でも、ほぼ8割以上の種をカバーした。しかし、出現頻度が高い種のみのデータを使った場合には保護区の有効性はいちじるしく低下した。調査地点を間引くテストでは、種多様性が高い地点のデータを使うと、3割程度の地点のみの調査データでも、ほぼ9割以上の種をカバーする保護区を選定することができた。個々の観測データ(ある場所にある種が分布しているというデータ)を間引くテストでは、1割程度のデータがあれば、ほぼ8割以上の種をカバーする保護区を作ることができた。
以上の結果は、有効な保護区を作るためにはかならずしも保全対象種すべての詳細データを集める必要はないこと、地域的には広域をカバーするのが望ましいが、それが困難な場合、種多様性が高い地点を優先的に調査することが望ましいことを示唆する。