| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-125 (Poster presentation)

日本の富栄養化湖沼における水生植物相変化の特徴

*西廣淳(東邦大), 赤坂宗光(農工大), 高村典子(国環研)

湖沼の富栄養化は、透明度の低下や底質への有機物蓄積を通して、水生植物の個体群衰退や局所絶滅の原因となる。本研究では富栄養化が進行した日本国内の湖沼、特に関東平野の湖沼(西浦、北浦、印旛沼、北浦)および日本海側の平野部の湖沼(河北潟、佐潟、柴山潟、木場潟)、釧路湿原内の湖沼(シラルトロ湖、達古武沼)を対象とし、種組成と水質の経時的変化および種の喪失に関する湖沼間の共通性を検討した。在来水生植物(沈水植物、浮葉植物、浮遊植物)の種数の経時的な変化パターンは湖沼により異なり、関東平野の湖沼では1970年代まで、日本海側の湖沼では1980年代以降、釧路湿原内の湖沼では2000年代以降の消失が顕著だった。文献情報に基づいて作成した水生植物形質データベースを活用し、各湖沼における局所絶滅に対する形質の効果を、湖沼をランダム効果とした一般化線形混合モデルで分析したところ、沈水植物は他の生活形に比べて有意に絶滅しやすかった。逆に、地下茎を発達させる種や地上茎の最大長の長い種は、そうでない種と比べて存続しやすかった。経時的な消失の順序を属間で検討したところ、沈水植物間で比較した場合ではイバラモ属植物が消失しやすいことや、ヒルムシロ属が存続しやすいことなどは、複数の湖沼で共通して見られた。また同属内の種間で比較したところ、セキショウモはコウガイモよりも、フサモはホザキノフサモよりも消失しやすいこと、ヒルムシロ属内でも消失しやすさに序列がある傾向が認められた。これらの生態学的機構や影響について議論する。


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