| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-126 (Poster presentation)
ため池の堤体(土手面)は定期的な刈り取りや火入れによって維持されている半自然草地である。土地開発や管理放棄によって半自然草原が全国的に減少する中、ため池はこうした草地に生育、生息する多くの動植物にとって重要なレフュージアとなっている。一方、老朽化した堤体の改修の際に、法面保護を目的として外来種の種子を含む人工植生シートを張り付ける工法が従来から行われており、在来植物の多様性低下が懸念されてきた。こうした在来植物への影響緩和を目的に、最近では、堤体改修の際に表土を一旦剥ぎ取り、改修後に堤体表面に張り付ける工法(配慮工法)が導入されつつある。しかし、改修前後の植物調査をもとに配慮工法の効果を調べた例はほとんどない。さらに、植物多様性の規定要因として、維持管理方法(刈り取りや火入れ)と改修工法の両者の影響を評価・比較することは、多様性維持にとって望ましい管理・改修方法を検討する上で重要である。本研究では草原性植物の多様性維持における配慮工法の有効性を明らかにするために、兵庫県播磨・淡路地域の51箇所(配慮工法による改修19箇所、従来工法による改修15箇所、未改修17箇所)のため池を対象に植物調査を行った。調査は改修の前後にあたる2004年~2011年(事前)と2013年(事後)に行われ、未改修のため池も同時期に調査した。堤体の外法面(水面とは反対側の法面)に生育が確認されたすべての植物種を記録した。また、ため池の管理者に対し堤体の維持管理方法に関する聞き取り調査を行った。植物の各カテゴリ(在来種、草原性指標種、絶滅危惧種、外来種)の種数と改修工法および管理方法(刈り取りと火入れの頻度)との関係性を統計的に分析した。