| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-131 (Poster presentation)
大阪府の千里ニュータウンには、公有地であるが特に利用がされないまま40年以上草刈りが行われてきた小っちゃい半自然草原が残されている。このような都市部に残された「塩漬け草原」にはどのような植物が残されているのだろうか?植物相と植生を調査し、その特徴を明らかにした。2013年の7月と10月に大阪府の千里ニュータウンに残された約0.32haと約0.50haの2つの小っちゃい草原を踏査し、出現した植物を記録した。また、2013年7月に1m×1mの調査枠を29個設置し、枠内に出現した植物を記録し、クラスター分析と指標種分析を行った。これらの草原は、現在では春と秋の年二回、草刈りと刈った草の持ち出しが行われている。
植物相調査の結果、109種の維管束植物が記録された。これらの中にはウツボグサ、ツリガネニンジン、ワレモコウ、スズサイコといった草原性と考えられる植物が多数含まれており、都市部に残された小っちゃい草原であるが草原性植物の生育地として機能していることがわかった。植生調査の結果、ネザサやススキが優占するタイプA、メドハギやウツボグサで特徴付けられるタイプB、アリノトウグサで特徴づけられメリケンカルカヤが優占するタイプC、チゴザサやノテンツキが優占するタイプDの4つのタイプの植生が認められた。特に、タイプCは表土が崩れた場所に、タイプDは浸み出し水がある場所に限られており、狭い範囲に多様な環境が存在することで様々な植物が生育していることがわかった。半自然草原は緑肥や飼料として草を利用することで維持されてきた生態系で、主に農業との関わりが深い。一方、今回の調査地は公的機関が用地維持・苦情防止などのために維持してきた草原であり、これらは維持されてきた社会背景が全く異なるという点で大変興味深い。