| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-137 (Poster presentation)
この20年間の間に、里山保全活動は飛躍的に普及した。しかし、活動が目標とする里山像は複数あり、互いに相容れない場合もある。そこで、目標とする里山像について整理するとともに、その際のコーディネートについて検討する。
目標とする里山像の多様さについて意識したのは、明治大学黒川農場の里山管理における著者の合意形成を通じてであった。周囲の里山保全活動の目標とする里山像には、ⅰ新しいレクリエーションの場、ⅱ伝統的な里山風景の再現の場、ⅲ現在、生息・生育している動植物の保全の場、ⅳ現在は利用されないので遷移に任せる、ⅴ里山と関わる新しい生活に位置づけるがみとめられた。
黒川農場では、ⅲ動植物の保全とⅱ伝統的な風景のあいだで対立がみられ、今のところ前者は自然生態園において、後者は西緑地において採用され、ゾーニングによって対応している。
著者の一人が担当している明治大学農学部3年次の植物保全生態学履修者に望ましい目標像を1つ選んでもらったところ、ⅲ動植物の保全が70%であった。これは科目と教員側の教え方によるものかもしれない。
里山の管理にあたっての合意形成において、対立する考え方は多数存在する。それは、「やって、みて、考える」ことによって、科学的な態度で、合意形成を図っていくしかない。コーディネーターの重要な役割は、その補助になることである。
しかし、目標のよしあしを結果で評価することはむずかしいので、その里山の生態的ポテンシャルと社会的ポテンシャルを把握したうえで、合意形成を行うことが有効であろう。そのためには、ポテンシャル論が普及する必要がある。