| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-145 (Poster presentation)

隔離されたマメナシ個体群の種子生産と発芽

増田理子・名古屋工業大学社会工学専攻

愛知県小牧市には約30個体からなるマメナシの自生地がある.この地区では種子生産は多数見られるものの,実生があまり確認されていない.この地区のマメナシ個体群を保護するためには実生更新が非常に重要なものとなるが,どのような原因で更新がうまくいっていないのかは不明である.そこで,平成24年〜25年にかけてマメナシの果実を採集し,結実率,稔性率,生存率,発芽率,発芽条件について調査を行った.結実率には年変動があり,おおむね10%〜50%であった.自家不和合性を持つ種としては結実率が高く,ポリネータを観察することはできなかったが,花粉の授受が行われていることが示された.稔性率も比較的高く,胚珠6個中だいたい3〜6個が種子を形成していた.しかし,個体ごとに大きな差が見られた.種子の生存率はTTC染色により判定した.種子生産が見られるものの生存率は20%程度と低いことが観察された.また,種子の発芽率についても同様の結果が得られた.種子の発芽特性に関しては定温条件下では発芽率が低く,変温条件下では発芽率が高かった.

小牧市の自生地は現在保護区となっているが,近年周りの環境が急激に開発され,ため池の水位も降雨によって変動するものではなく一定の水位が保たれるようになってきている.このため自生に適した地域が水没し,温度条件が定温化している可能性がある.これが.実生が少なくなってしまった理由の一因としてあげられる.また,種子をよく生産しているように見られているが実際には生存している種子が少ないことも実生の減少の理由となっている可能性がある事が示された.


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