| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-146 (Poster presentation)
伝統的な農地管理は、地域の生物多様性維持に重要な役割を果たしてきた。しかし近年、農地管理の在り方は劇的に変化し、生物多様性にも大きな影響を与えている。特に、近代化の中で起こってきた農地の集約化と耕作放棄は、影響の仕方は異なるものの、どちらも生物多様性に強く影響している。農業の近代化に伴う生物多様性の変化を予測するためには、異なる生態的特徴をもつ様々の種の応答の違いを明らかにする必要がある。そこで本研究は、これまで農地利用形態との関係があまり検討されていなかった鳥類を対象に、農業の集約化と耕作放棄が群集構造に与える影響を評価した。具体的には、利根川流域で実施した定点センサスで得られた鳥類データのうち、個体数の多い15種について一般化線形モデル(ポアソンまたは負の二項分布)を用いて解析した。目的変数として各種の個体数を、説明変数としてグリッド内の土地利用(農地面積、放棄地面積、開水面面積、景観多様度)および農地整備率を用いた。ここでの農地とは、水田性種は水田、畑地性種は畑地の面積および整備率である。モデル平均によってAkaike weight(AW)を計算することで、各説明変数の影響力を定量化した。その結果、圃場整備の影響は4種が負(ダイサギ、チュウサギ、ツバメ、セグロセキレイ)、1種が正(アオサギ)だった。また、耕作放棄の影響は2種が負(コチドリ、チュウサギ)、2種が正だった(キジ、セッカ)。これらの結果は、種によって受ける影響の正負が異なり、なかでも耕作放棄は水田性種の減少と草地性種の増加を引き起こすことで、群集構造を改変させていることを示唆している。耕作放棄面積は現在も増加を続けており、特に水鳥類が利用する水田放棄は、近い将来の国内における鳥類群集構造を大きく改変する可能性がある。