| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-147 (Poster presentation)

多雪地における中・大型哺乳類の森林利用とその餌資源量評価

*江成はるか(雪国野生動物研究会), 江成広斗(山形大・農)

針葉樹人工林は哺乳類の餌資源が少なく、低質な生息地であると考えられている。その一方で、多雪地の針葉樹人工林では、積雪による撹乱が発生しやすいため、若齢のスギ人工林における下層植生の多様度は、広葉樹一次林よりも高い。しかし、これまで多雪地の人工林における哺乳類の、針葉樹人工林利用を評価した事例は少ない。

そこで、本研究では、2011年から2013年の非積雪期において、林齢40年未満のスギ人工林(以下若齢林)と、林齢40年以上のスギ人工林(同壮齢林)、また対照区として、広葉樹一次林(同一次林)と、広葉樹二次林(同二次林)を対象に、a) 自動撮影カメラを設置し、それぞれの哺乳類相を評価した。また各林分における、b) 樹冠開空度と林内の見通し距離を調査し、c) 液果と堅果の結実木本数を調査した。

その結果、①森林を利用する哺乳類は、一次林および二次林のみを利用するものと、撹乱地(二次林と若齢および壮齢林)を選択的に利用するものに分類できること、また、②液果生産木は、若齢および壮齢林と二次林で多く、堅果生産木は、一次林と二次林に多い傾向があることが明らかとなった。

以上から、撹乱を受けてから時間が経過していない林分(若齢林および二次林)は、樹冠開空度が高く、林床に日光が届くため、液果が結実する遷移初期種が多いことから、必ずしも人工林が哺乳類にとって低質な生息地ではないことが示唆された。


日本生態学会