| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-148 (Poster presentation)
絶滅危惧種アイナエ(マチン科)の生活史と個体数変動
岡崎純子*、小原昌之、鶴田翔子(大阪教育大・教員養成)・山下純(岡山大・植物研)・植松千代美(大阪市大院・理)
人為的インパクトや里山放置による里地での絶滅危惧植物が増加している。これらの種では急激な個体数激減のためその保全で重要な生活史情報すら解明されていない場合も多い。材料としたアイナエ(Mitrasacme pygmaea)はマチン科小型一年生草本で現在26都府県で保護を要する植物として指定され近畿レッドデータブック(2001)では絶滅危惧Cランク、大阪府レッドデータブック(2000)で絶滅とされている。しかし岡崎他(2013)により本種の大阪市大理学部附属植物園での生育が確認された。本研究では再発見された絶滅危惧植物アイナエの個体群保全を目指しその繁殖生態に関わる生活史と生育環境・個体数変動の調査を行った。生活史については、フェノロジーと交配様式を調査した。交配様式については近畿の自生4集団で比較し、生育環境・個体数変動については植物園内で光環境の測定・個体数調査を行った。その結果以下のことが明らかになった。1)アイナエは5月下旬からその実生が出現し8月下旬から開花結実を開始した。結実率は調査4集団で平均38.2%では袋がけ実験から自家和合性であることも明らかになった。2)出現頻度と光条件とは関連が認められ,この種の生育には十分な光条件が必要であることが判明した。3)植物園では本種の開花前の7月〜8月上旬に機械による草刈りが数回実施されているが、アイナエ個体群の変動にはこの影響はほとんどなかった。これらのことから、アイナエ個体群の維持には開花結実期に影響を与えない時期の現在の草地管理がアイナエの生育・繁殖を助長しているものと考えられる。