| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-154 (Poster presentation)

インドネシア、北スラウェジ、タラワアン川水系における小規模金精錬所由来の水銀汚染調査

森 敬介*(国水研) ,永野匡昭(国水研),マルクス・ラスート(サムラトゥランギ大学)

インドネシア、北スラウェジのタラワアン川水系の上流域において、1996年に金鉱脈が発見されてから、小規模金精錬所により水銀が管理されない状態で使われ、環境に流出している。現地のサムラトゥランギ大学と共同で、2011年と2012年に生物濃縮および住民への影響に焦点を当てた水銀汚染調査を行った。流域に沿った3つの村(上流、中流、下流)および対照地区で、底泥、魚類と餌生物、住民毛髪の採集と水銀分析をおこなった。2年間の調査で底泥200サンプル、魚類等300サンプル、住民毛髪500サンプルを得た。魚類サンプルは胃内容物の分析を行い、肉食、雑食、草食等の食性を明らかにした。得られたサンプル全ての総水銀と一部サンプルのメチル水銀を測定した。3つの村での底泥、魚類等、毛髪の水銀分析結果から、各村での生物濃縮による水銀汚染状況と住民への影響を明らかにし、汚染源の上流域から下流域への汚染拡散の現状について検討した。

底泥の総水銀値は上流の村(最大1.45ppm)で高く、中流(0.47)、下流の村(0.08)と下がっていく傾向が有った。なお3つの村すべてが、対照地区(0.01未満)より有意に高い値を示した。魚類等も対照地区に比べ有意に高い値を示し、特に肉食魚で顕著であった。ウナギやナマズの一種など複数の魚類にて日本の暫定規制値(0.4ppm)の数倍(総水銀値1-2ppm)を示した。地点間の比較では上流、中流の魚が共に高い値を示した。生物濃縮に関し、魚や餌生物の移動、流下を考慮する必要があると考えられた。住民毛髪の分析結果、平均値は対照地区と大きな差は無く、特に濃度の高い例も見られず、現時点では住民への影響は低いと考えられた。


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