| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-157 (Poster presentation)
水田に生息するカエル類の中には数を減らしている種があるが,それらは水田やそこに付属する水路,畦などで産卵を行うことが知られている.そのため,カエル類の産卵に適した水田環境を維持することは,カエル類の保全に有効であると考えられる.本研究では,水田内に産卵するトノサマガエルと,畔で産卵を行うシュレーゲルアオガエル,モリアオガエルを対象として,2012年5月13日から6月29日までの期間,滋賀県高島市今津町の水田地帯でそれぞれのカエル類が産卵場所とする環境要因の調査を行った.各調査地点において,水深,水温,農薬の使用の有無,接する水路の有無,森林からの距離を調べた.また,荒起こし,畦塗,入水,代掻きといった農作業が行われた後に,カエル類が産卵を行ったかどうかを調べた.調査の結果,トノサマガエルの卵塊は5月13日から20日までに計242個が確認された.これらの卵塊は全て水田で発見され,水路で発見されたものはなかった.また,トノサマガエルには水温の高い水田を産卵場所に選ぶ傾向が見られた.モリアオガエルの卵塊は,5月20日から6月22日まで確認され,合計632個確認された.モリアオガエルの卵塊は水温が20℃から25℃の環境で非常に多く確認され,また有意に慣行田で多く産卵していることが示された.この要因として,栄養塩の多い慣行田では無農薬田に比べて植物プランクトンなどが多く発生し,モリアオガエル幼生の成長に良い環境であることが考えられる.シュレーゲルアオガエルの卵塊は,調査が開始された5月13日から5月27日までの間に計67卵塊を確認した.シュレーゲルアオガエルの卵塊は水田よりも水路側で多く確認され,また畦塗を行っていない畦で産卵数が有意に多かった.