| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-161 (Poster presentation)

生物多様性地域戦略策定促進のために求められる行政担当者支援のあり方とは?

橋本佳延 兵庫県博,上田萌子 兵庫県博,三橋弘宗 兵庫県立大学,西田貴明 MURC

生物多様性基本法は自治体に対し地域戦略を定める努力義務を課している.2013年12月現在、都道府県の約7割が地域戦略を策定済みまたは策定中である一方、市町村では策定率は約2%と低く、多くの自治体が地域戦略策定の課題を抱えている。

そこで本研究では地域戦略策定の促進に寄与する行政担当者への支援方法について考察することを目的に、戦略策定の障害となる事象とその対処法、課題等について、2012年10月時点で地域戦略策定済みの兵庫県下4市の行政担当者に対して個別ヒアリングを行った。また、近畿地方の自治体の生物多様性施策担当者を対象としたワークショップを開催、グループディスカッションを行い、行政担当者が戦略策定に対して不安視している事柄について聴取した。

結果、行政担当者が抱く不安の大半は、A.恵まれない執務環境(人材・予算の不足、外部専門家との日常的な連携が希薄など)と、B.生物多様性や戦略についての知識不足から去来することが明らかとなった。

これらを克服するためには、(1)生物多様性の基礎知識だけでなく、戦略の必要性や有効性などの政策面の知識についても研修機会やテキストを充実させること、(2)地域独自の生物情報などを把握するための専門家や活動団体との交流の機会、(3)策定作業の困難・克服経験の共有や行政技術を伝える自治体間の相互の学び合いの機会を設けることなどが有効と考えられた。

また、行政担当者の多くは戦略策定担当となって初めて生物多様性を学ぶことになるため、戦略策定担当者の着任時の知識は一般市民と同程度ことが予想された。このことから、(4)生物多様性の主流化をはかることが、中長期的には地域戦略策定促進に繋がると考えられた。


日本生態学会