| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-164 (Poster presentation)

津波による攪乱を受けた海岸林における植物と昆虫の多様性:南蒲生モニタリングサイトでの検討

*遠座なつみ(東邦大・理),小澤佳奈(東邦大・理),永幡嘉之(),富田瑞樹(東京情報大),原慶太郎(東京情報大),平吹喜彦(東北学院大・教養),西廣淳(東邦大・理)

2011年の東北地方太平洋沖地震によって起きた津波による攪乱が、仙台湾沿岸の海岸林の植物と昆虫の多様性に与えた影響を明らかにするための現地調査を行った。対象とした南蒲生モニタリングサイトでは、①津波前は高木林で津波を受けても倒木が生じなかった場所(「残存高木林」)、②津波前は高木林でほとんどの木本が倒木した場所(「攪乱高木林」)、③津波前は低木林でほとんどの木本が倒木した場所(「攪乱低木林」)、④津波前から存在し残存したヨシ原(「後背湿地」)の4通りのパッチタイプが認識できた。2013年7月に各パッチタイプに10m2のコドラートを5つずつ設置して植生調査を行ったところ、パッチタイプ間での種組成の違いが顕著にみられ、津波前の植生が共通する残存高木林と攪乱高木林でさえ、一つのパッチタイプでしか確認されなかった「パッチ固有種」の割合がそれぞれ40.6%、28.3%と高い割合を示した。また後背湿地は、確認種数は少なかったものの固有性が高く、後背湿地のパッチ固有種の割合は54.5%を占めた。また昆虫相にも、植生の違いに応じた不均一性が認められた。コドラート当たりの在来種数に影響する環境要因を解析したところ、コドラート内の地面の凹凸の程度(レベル測量により評価)による正の効果と、草本層における開空率(全天写真により評価)による負の効果が認められた。地面の凹凸は倒木に伴う根返りで生じたものが多く、攪乱高木林内で顕著にみられた。このように津波は攪乱の強度の違いにより海岸林内のβ多様性を高めるとともに、倒木に伴う微地形改変によりα多様性の高い場所を形成したことが示唆された。


日本生態学会