| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-166 (Poster presentation)
北部九州のカササギは400年以前に移入された外来種であるが,佐賀,福岡両県の一部が国の天然記念物指定地として保護の対象となっている.両県では1990年代までに個体数増加,分布拡大が生じたが,最近は個体数が減少しているのではないかとの懸念が生じている.今回,佐賀県による営巣現状調査,過去の営巣状況報告など諸資料を基に,佐賀,福岡両県におけるカササギ生息数の現状を報告する.
佐賀県全域においては,1970年の営巣数4000個から75年の2194個と半減した後,増加に転じ, 84年には最高の5952個に達した(全県一斉調査資料).本種は本来樹木に営巣するが,電柱への営巣が1980年以降急速に増加し,佐賀県においては電柱営巣の割合は1970年代半ばの10%程度から, 84年48.8%, 89年69.4%となり,2012年には91.6%に達した. 80年代の電柱営巣率上昇傾向から推定すると、90年代半ばには90%に達していた.福岡県においても,電柱を含む人工物への営巣割合が1983年には36.4%であったが, 97年度には80%を超えていた.電力会社は漏電防止のために,毎年電柱上の巣を撤去し,県の文化財課へ数を報告している.撤去巣資料に基づけば,佐賀県では1993年頃にピークとなりその後減少に転じている.福岡県内の指定地内(旧三潴郡,旧山門郡)でも、1994年の6373巣から2012年の2947巣へと半減していた.
分布中心部(佐賀市近辺や柳川・大川市周辺)では大きく減少し,一方,周辺部では営巣数が増加していた.70年代〜80年代の営巣数増加は電柱営巣率の上昇を伴っており,近郊への住宅地の進出による営巣場所の出現が増加の原因であり,市街地のさらなる拡大による採餌場所の減少や人間の干渉が90年以降の減少の理由と考えられる.