| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-170 (Poster presentation)

秋吉台国定公園内の耕作放棄地における刈り取り管理とそれにともなう植生の変化

*太田陽子(緑と水の連絡会議),平舘俊太郎((独)農環研),森田沙綾香((独)農環研(現産総研))

山口県中央部の秋吉台国定公園では、半自然草地の中に低木や外来植物が繁茂する耕作放棄地が点在している。これらは生物多様性保全上、また自然公園の景観保全上好ましくないものとされている。本研究では、草原再生の手法を検討するため、年1〜2回の刈り取り管理が行われている耕作放棄地を対象に植生の変化を分析した。

刈り取り作業は2008、2009年は7月に1回、2010年以降は7月と9月の2回実施されている。この作業地に、刈った草を持ち出す区(持出区)、草を持ち出さない区(持出なし区)、刈り取らない区(刈なし区)を設定し、7月の刈り取り後に再生した群落について毎年9月に植生調査を行った。また、2009年と2011年にプロット周辺の土壌を採取し、有効態リン酸量や土壌pHを測定した。

管理の継続にともない、持出区では地上部現存量が減少した。同区ではセイタカアワダチソウは草丈が低くなり、ネザサは植被率が増加した。新たにススキやチガヤ、カワラケツメイなどの草原性植物も出現したが、一年生の外来植物の種数も増加した。一方、持出なし区と刈なし区ではセイタカアワダチソウやクズの植被率が増加した。さらに、持出なし区ではススキの植被率が低下した。また、有効態リン酸量が減少したプロットでは地上部現存量や外来植物の乗算優占度が低下する傾向にあり、土壌pHが低下したプロットではネザサやススキの乗算優占度が増加する傾向にあった。

これらのことから、本調査地では刈った草を持ち出す管理を6年ほど継続することで草原性植物の侵入が可能になるが、外来植物の優占は継続することがわかった。また、刈った草を放置した場合は管理の効果が小さいこともわかった。さらに、地上部現存量や一部の種の優占度の変化は、土壌の化学的特性の変化が関連していることも示唆された。


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