| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-171 (Poster presentation)
草原は固有性の高い動植物を擁する生物多様性保全上重要な場である。しかし都市開発や管理放棄により草原は全国的に減少し、草原生の植物は絶滅の危機に瀕している。本研究では、江戸時代に広大な草原が存在していた千葉県北西部を対象に、草原の保全と再生に資する基礎研究として、明治初期から現在までの草原の分布・面積の変化を把握するとともに、生物多様性の観点から見て良好な草原について土地被覆の変遷を解明することを目的とした。
土地被覆の変化を明らかにするために明治期から現在までの土地被覆のデータを使用して、各年代の土地被覆ごとの合計面積を求めた。明治期については、文献から植生情報を補った。また2005年に本研究の対象範囲内の草原を対象に植生調査を行った先行研究のデータを活用し、その時点での管理形態と過去の土地被覆の履歴のそれぞれが、在来植物種数ならびに草原生植物種数に影響する要因を解析した。
明治期において草原面積は全体の4.2%であり、針葉樹林が全体の42.9%と最も多かった。しかし、文献調査により針葉樹林の林床が草原生植物の生育地になっていたことが示唆された。1980年代では草原の面積は全体の14.1%に増加し、2000年代には7.8%になった。残存する草原の在来種および草原生植物の種数に影響する要因を解析したところ、現在の土地管理だけではなく、過去の土地被覆も有意に影響していることが明らかになった。在来植物および草原生植物は1880年代に樹林であった場所、1980年代に草原であった場所、そして現在草刈りなどの管理を行っている場所に多く出現することが明らかになった。今後、草原の保全や再生を考える上では、過去の土地被覆の履歴を考慮し、効率的かつ計画的な保全活動をする必要性がある。