| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-172 (Poster presentation)
津軽平野は広い水田地帯と多くの湖沼群が存在し、ガンの主要な中継地として知られる。その最も北に位置する津軽十三湖周辺の水田地帯も主要な採餌場所と渡りの経路となっており、また、岩木川下流域は希少鳥類の生息場所ともなっている。一方、風力資源の豊富な為、風力発電施設の建設計画が多数進行中である。ガン・ハクチョウ類に対する風力発電施設の影響評価の事例は乏しく、渡り中継地における全渡り期間の連続調査データはほとんど無い。本研究では春の渡来開始時期から渡り終了までの連続したデータを蓄積し、可能な限りバードストライクが起きないような風車の配置、運用方法を提案する事を目的とした。本報告では環境大臣から勧告を受けた意見書を参考に、ガン類(マガン・ヒシクイ)とハクチョウ類(オオハクチョウ・コハクチョウ)を中心に扱う。
調査は風力発電施設計画の対象区域全体が見渡せるよう2定点を設け、人の影響を考慮し小屋の中から観察を行った。また、船舶レーダーを用いた調査を3/13~16と3/20~31にかけて行い、夜間や遠方の鳥類の飛行経路を記録した。期間は3/13~4/19まで38日間連続で行った。時間は6:00~16:00を基本とし、他に数日調査時間外の記録も行い、十三湖の塒の調査も行った。
調査の結果、ガンの計画区域内での採餌、渡りのピークはそれぞれ3/20、3/25であり、個体数はそれぞれ3,915羽、15,754羽であった。採餌は4/18、渡りは4/14まで見られた。また、ハクチョウ類の採餌、渡りのピークはそれぞれ3/22、3/31であり、採餌は4/14まで、渡りは4/9まで見られた。渡り行動の多くは風車との衝突確率は低く見積もられたが、建設予定地における採餌行動では衝突が懸念される飛翔行動が多数みられた。