| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-174 (Poster presentation)

いさわ南部地区の環境配慮型水路における魚類相の特徴

*渡部恵司, 森 淳, 竹村武士, 小出水規行(農研機構 農工研)

農業農村整備事業の現場において,より効果的な生態系配慮対策を講じるためには,既存の生態系配慮施設(以下,「配慮施設」)が魚類の生息に果たしている役割を明らかにする必要がある。配慮施設における魚類の生息の実態を明らかにするため,同一水路系の複数の配慮施設において魚類相を調査した。

調査地は,いさわ南部地区(岩手県奥州市)とした。当地区では,国営農地再編整備事業により原川幹線排水路の改修および原川のバイパス水路である細入川の新設が行なわれ,異なる配慮施設が同一水路系内に複数施工された。この水路系の配慮施設7地点および従来工法2地点を調査対象とした。定置網を用いた調査を,非灌漑期の2013年10月9日~11日に行なった。

調査の結果,8地点において8種510個体が採捕された。各地点の種数,総個体数,多様度指数(森下のベータ),個体数に占める遊泳魚の割合および優占種ギバチの平均体長から,地点はクラスター分析によりグループA~Cに分類された。このうちグループAは従来工法の地点,グループBおよびCは配慮施設の地点となった。グループAは,種数・個体数が0,あるいは少なかった。グループBは,グループCに比べて種数,総個体数,多様度指数,遊泳魚の割合が低く,生息する魚種が底生魚(ギバチ)に偏る傾向にあった。一方で,グループCは各指標の値が比較的高かった。グループCの地点は,水深が多様で,非灌漑期にも30~60cm程度の深みが存在することが,多様な魚類が生息する理由の一つと推察される。また,ギバチの体長組成は地点によって大きく異なった。本種の移動実態を明らかにする必要があるものの,仔稚魚が成育に利用する配慮施設と成魚の生息に利用する配慮施設が別々に存在すると推察される。


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