| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-181 (Poster presentation)
シマフクロウに対する国の保護増殖事業は、一貫して生息地を非公開にすることで、営巣地や採餌場所へのバードウオッチャーや写真家の接近を防ごうとしてきた。しかし、保護事業の中心的役割を果たしてきた人為給餌と巣箱設置が生息個体を特定個所へ誘導することで、結果的にシマフクロウを見やすい場所を創り出し、そのような生息地の一部では、シマフクロウ目的の来訪者数が激増し、彼らのブログやSNSを介して生息情報がさらに拡散している。
ウエブ上に公開されているシマフクロウの写真や生息情報の大部分は、北海道内3カ所の宿泊施設と訪問客から発信されていた。これらの宿は、自らシマフクロウを餌付けしたり、国の給餌池を利用して客の撮影と観察行為を手助けしており、それらの宿を利用した旅行会社による撮影ツアーも実施されている。公表されている写真には、巣立ち雛へのストロボ照射、営巣地への侵入等、シマフクロウの生存に悪影響が危惧される撮影行為が含まれていることから、生息地への立入に対する規制策が急務と考えられた。
シマフクロウの写真や生息情報を発信している個人のブログを分析すると、旅行の主目的がシマフクロウの写真撮影に限定されている場合が多く、カメラやレンズの機種、撮影技術に話題が偏る傾向があった。一方、北海道で被写体として同様に人気の高いタンチョウに関するブログの話題は、必ずしも撮影に限定されていない。
本発表では、撮影者に人気の高いカワセミやフクロウに関するブログとの比較も加えシマフクロウブロガーの特性を抽出し、生息地でのウオッチャーや写真家の管理方法を検討する。(本研究は三井物産環境基金の助成を受けています。)