| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-183 (Poster presentation)
希少種の有効な保全策を考える上では、複数の空間スケールから個体群構造を把握し、その成因を探る必要がある。本研究では、佐渡島固有種のサドガエル(Rugosa sussura)を対象に、遺伝子解析から保全管理単位となる地域個体群の特定と地域個体群内の生息地ネットワークの推定を行い、また個体数の分布情報から、局所的な生息に適する環境条件を評価した。遺伝子解析では、24集団373個体についてマイクロサテライト7座位を用いた。まず、個体の遺伝子型をもとにしたSTRUCTURE解析により、サドガエルは地形により、3つの地域個体群に分けられることが示唆された。次に、生息地間の遺伝的共分散を用いたPopulation Graphから、地域個体群内の生息地のネットワーク構造を推定した。地域個体群内では生息地の著しい分断化は見られなかったが、一部で環状のネットワーク構造を形成していた。さらに、佐渡島の国仲平野を中心とした30か所の水田においてサドガエルの分布を調べ、GLMを用いて景観要因と局所要因から個体数に影響する要因を探索した。その結果、水田周辺の水路が浅い場合に個体数が多くなる傾向があったが、地形的湿潤指標(TWI)や凹凸度、江の有無については効果が見られなかった。以上の結果をもとに、サドガエルの保全上重要な生息地を、生息地における遺伝的多様性とネットワークの中心性から推測した。その結果、遺伝的に重要性が高い生息地でも、生息密度が低い場合があり、そのような生息地では個体群の再生が必要だと考えられた。本研究で用いた空間的遺伝解析と生息適地解析を組み合わせるアプローチは、分断景観に生息する希少種を広域スケールで保全し、必要に応じて生息地を再生する指針を与える上で非常に有効であると考えられる。