| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-025 (Poster presentation)

過重力下におけるヒメツリガネゴケの光合成能力と形態変化

竹村香里(京工繊大),蒲池浩之(富大・院・理),久米篤(九大・院・農),藤田知道(北大・院・理),唐原一郎(富大・院・理), 半場祐子(京工繊大・院)

宇宙ステーション内での人間の長期滞在を可能にするためには、食料生産機能とガス処理機能を持つコンパクトな植物栽培システムの構築は重要課題である。コケ植物は小型で根がなく省スペースで容易にかつ大量に培養できるため、被子植物に比べ利用しやすい可能性がある。しかし宇宙ステーションのように地上とは重力条件の異なる環境下におけるコケ植物の応答については全く明らかになっていない。シロイヌナズナへの過重力刺激は花茎のリグニン沈着と2次細胞壁の発達を促進することが報告されている(Tamaoki et al.,2006)。このような形態変化は植物体内の二酸化炭素コンダクタンスに影響し、その結果光合成機能や成長に影響する可能性がある。本研究ではモデル生物でもあるコケ植物ヒメツリガネゴケの過重力に対する成長応答反応の調査を目的に、過重力下10Gで生育したヒメツリガネゴケの光合成解析と形態観察を行った。

1Gもしくは過重力10Gの環境下で8週間培養したヒメツリガネゴケの光-光合成応答は、1Gと10Gで差は見られなかった。また、電子顕微鏡による形態観察により、1Gと10Gの細胞壁の厚みに有意差はなかったが、10Gの葉緑体が1Gの葉緑体よりも大きい傾向があることがわかった。茎葉体の炭素安定同位体比は、10Gの方が低くなることがわかり、10Gの植物体内の二酸化炭素コンダクタンスが増加している可能性が明らかになった。これらの結果より、過重力が葉緑体の形態に変化をもたらし、植物体内の二酸化炭素コンダクタンスに影響を与えた可能性が示唆された。


日本生態学会