| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-027 (Poster presentation)
樹木の樹高成長は光獲得に影響を与えるため適応的な意義がある。しかし樹木が到達可能な樹高は種ごとに限界があり、それは樹高成長を担う樹冠上部のシュート長が、樹高増大に伴い低下する事と関係している(Osada 2011)。樹高増大に伴う水ストレスの増大はシュート細胞の生長を抑制し、シュート長を低下させると考えられているが(Woodruff et al. 2004)、この事は一部の高木種でしか報告されていない。同所的に共存する高木種と低木種では、成木で経験する水ストレスが異なるため、低木種での、樹高に伴うシュート長低下にも水ストレスが関っているかは不明である。そこでシュート長の低下と水ストレスの関係を同じ森林の高木種と低木種で比較した。京大上賀茂試験地の、最大樹高10m以上の林冠木、8~10mの亜高木、4m以下の低木各5種で、樹冠上部のシュート長、シュートの木部導管・木部繊維断面積に、樹冠上部シュートの日中・夜明前水ポテンシャルが与える影響を調べた。
シュート長、導管・木部繊維面積を従属変数とし、樹高、日中・夜明前水ポテンシャル、光環境からAIC説明変数選択を行った。シュート長では林冠木5種、亜高木3種、低木2種で水ポテンシャル(日中or夜明前)が選択され、導管面積では低木2種以外の13種で、木部繊維断面積は林冠・亜高木の4種以外の11種で選択された。
上の4つを説明変数とした分散分析で、シュート長と導管面積のモデルでは、日中・夜明前水ポテンシャルで説明される分散と最大樹高の間に正の相関があったが、木部繊維では相関が無かった。
高木になる種ほど、水ストレスがシュート長と導管直径を決定する重要な変数になっていたが、木部繊維はそうではなかった。このことは、細胞サイズの低下がシュートサイズの低下に直接つながっていない事を示唆している。