| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-028 (Poster presentation)
熱帯高木樹種の根系に関する野外調査は多大な労力と時間を要するために十分な研究がされていない。しかし、根系は樹木個体のバイオマス量の10%以上を占めており、その種間差が樹種ごとの生存戦略に深く関与している可能性が考えられる。東南アジア熱帯雨林では、一斉開花と呼ばれる植物群集の同調的な開花現象が知られており、この現象は短期間の強い乾燥に起因すると言われている。土壌は表層に近いほど乾燥開始から早い時点で強度の乾燥状態に陥ることから、根の浅い樹種ほど乾燥を敏感に感知するため開花頻度が高くなるという作業仮説を立てた。本研究では、①樹種ごとの吸水深度の推定と②吸水深度と開花頻度の関係について明らかにすることを目的とした。
調査は2013年7月から9月にかけて、マレーシアのランビルヒルズ国立公園において実施した。材料はフタバガキ科の4樹種(Dryobalanops alomatica [DA], Diterocarpus globosus [DG], Shorea beccariana [SB], Shorea laxa [SL])とし、成長錐によってコアを採取、またハンドオーガを用いて対象木周辺の土壌サンプルも採取した。低温真空蒸留法によって両サンプルから水を抽出し、含まれる酸素安定同位体比(δ18O)を調べ、樹木の吸水深度を推定した。約20年間の開花記録を用いて59種326個体の開花頻度(回/10年)を算出した結果、種間差がみられ、10年間の平均開花回数は最大で9.7回、最小で0.8回となった。対象の4種ではDAで3.9回、DGで2.3回、SBで2.2回、SLで0.8回となった。発表ではδ18Oからの吸水深度の推定値とフタバガキ科4種の根系形態の野外調査結果をふまえて、作業仮説を検証する。