| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-029 (Poster presentation)

スギ細根の解剖特性と形態の季節変化

*田和 佑脩,武田 博清 (同志社大院・理工)

従来では樹木細根は吸収特性や形態特性を示すために直径2mm以下という枠組みで分けられきたが、同じ根系内においても分枝位置により生理特性や形態特性が異なることが示されており、分枝位置から根を特徴付けることで根系内の根の機能分化を説明するのに有用であることが示されている。しかし、最近の研究から同じ分枝位置の根であっても、原生木部の数の違いにより肥大する根かどうかが決まっており、細根系内での個根のlife-cycleの違いの指標となることが示されている。また、二次肥大の有無などの違いにより吸収特性を持つ根かどうかも分かれるため、分枝位置だけでは根の特性を測ることは出来ない。また、根の生長量や形態は土壌条件や季節により変わることが知られているが研究例は少ない。そこで本研究ではスギ細根を対象に、土壌層(有機物層と鉱物質層)と季節(成長期、非成長期)に対しての根の内部形態特性の変化を明らかにした。

先行研究と同様に先端から基部に行くにつれ多原基の割合が多くなる傾向にあった。特に有機物層では成長期に先端根で2原基の割合が大きくなっていたが、鉱物質層では季節間で変化はなかった。二次肥大率の割合は先端から基部に近づくにつれ増加したが、層・季節間での変化はなかった。また、根系内の先端根の数は有機物層では成長期に高くなっていたが、鉱物質層で変化はなかった。これらから有機物層では根の生長に伴い根端に吸収根を配置するが、鉱物層では季節に関わらず定常状態を維持していることが示唆された。


日本生態学会