| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-031 (Poster presentation)

ブナの道管形成に及ぼす晩霜害の影響

*川村航・弘前大学,石田清・弘前大学,高田克彦・秋田県立大学,野堀嘉裕・山形大学

近年の気候の温暖化により、気温の上昇と共に気温変動幅の増加や、落葉広葉樹の開芽の早期化が予測されており、晩霜害が増加することが懸念されている。ブナFagus crenataは開芽時期が早いため、春期の低温による葉やシュートの凍結障害である晩霜害を被りやすい。温暖化によってブナの開葉時期がさらに早まった場合、晩霜害を被る頻度の増加によってブナの成長が減少することが予測される。ブナ林で晩霜害の実態を調べることは、今後の温暖化によるブナ林生態系への影響を解明するために非常に重要である。以上の視点から、2010年に晩霜害が発生した八甲田連峰のブナ林を対象とし、ブナの年輪サンプルを解析することで、晩霜害がブナの肥大成長と道管形成に与えた影響を解析した。また、過去の気温を推定し、過去の晩霜害が肥大成長と道管形成に与える影響についても解析した。さらに過去の月平均気温と年輪幅標準値(TRI)との関係も分析した。1980~2010年の年輪を解析した結果、晩霜発生年にブナの肥大成長量が減少していた。また、晩霜害発生年には、肥大成長初期の道管直径と道管面積の減少、肥大成長中期の道管数の減少、さらに肥大成長後期の道管直径と道管面積の増加及び道管数の減少が生じていた。TRIと各月・各年の平均気温との相関を分析したところ、成長当年(6~8、10月の月平均気温)及び成長前年(5~9月の月平均気温)の月平均気温とTRIとの間に有意な相関が認められた。この相関は、グループ(集団もしくはフェノロジーが類似した個体の集まり)によって符号や大きさが異なっていた。


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