| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-035 (Poster presentation)
渓畔林林床で同所的に生育するネコノメソウ属5種(ハナネコノメ,コガネネコノメソウ,イワネコノメソウ,ニッコウネコノメ,ツルネコノメソウ)の生態的特性を比較した.
渡良瀬川源流域に位置する東京農工大学FM草木で,夏季に葉の厚さ(LT),葉面積(LA),葉の乾燥重量(LM),シュート直径(SD),最大シュート伸長量(SL)を計測し,葉面積当たりの乾燥重量(LMA)を算出した.また,春季に種子を採集し,種子サイズ(SS),種子重(SM),果実あたりの種子数(SN)を計測した.
ハナネコノメはLT,LA,LM,SD,SLのいずれも小さく,LMAが大きかった.コガネネコノメソウはLT,LA,LM,SDが大きくSLは中間的であり,LMAは大きかった.イワネコノメソウはLT,LA,LM,SD,SLのいずれも中間的であり,LMAは小さかった.ニッコウネコノメはLTは中間的であり,LA,LM,SD,SLは大きく,LMAは小さかった.ツルネコノメソウはLTは中間的であり,LA,LMは大きく,SD,SLは小さく,LMAは小さかった.SS,SMが大きい種では,SNが少なく,トレードオフの関係がみられ,ハナネコノメ,ツルネコノメソウはSS,SMは小さかったがSNは多く,コガネネコノメソウ,イワネコノメソウはSS,SMは大きい傾向であった.
コガネネコノメソウは葉・シュートのサイズ,LMAが大きく,少数の大きな種子をつけ,成長にコストがかかるために回転率が低い可能性が考えられた.イワネコノメソウとニッコウネコノメは葉とシュートのサイズの配分は類似した.ハナネコノメ,ツルネコノメソウはともにシュートのサイズへの配分が小さく,ツルネコノメソウがより葉のサイズへの配分が大きかった.今後,葉の枚数やシュート本数,果茎数の比較から種間のトレードオフの関係を示すことで,各種の適応的な立地環境と共存機構についてより詳細に検討できると考える.