| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-038 (Poster presentation)

秋田スギの梢端葉の水ストレスは貯水機能によって改善される?

*東若菜,南野拓也,堀田佳那,石井弘明,黒田慶子(神戸大院・農)

高木の樹高成長は,樹冠上部の水ストレスが主要因となり制限されると考えられてきた。一方,発表者らの研究成果から,樹高世界一のセコイアメスギでは針葉が受ける水ストレスが,高さによらず一定であることが示唆されている(Azuma et al. 2012)。本研究では,日本の主要造林樹種であり,樹高日本一のスギの葉の形態特性,水分特性および解剖特性について樹冠内の垂直変化を明らかにした。

樹高50mの秋田スギの針葉の葉面積当たりの葉乾重(LMA)は高さに比例して大きくなった。一方,光環境に対しては,LMAは開空度40%までは大きくなったが,それ以上の明るさでは変化がなかったことから,樹冠上部では重力による静水圧や通水距離の増加による通水コンダクタンスの低下が,葉の形態的光順化反応を規定すると考えられた。針葉の受けている水ストレスの影響は高さによらず一定であった。また,樹冠上部ほど葉の貯水量(leaf succulence)が多く貯水性(leaf capacitance)が高かったことから,葉の貯水機能が水ストレスの緩和に寄与していると考えられる。また,針葉の横断面切片の計測では,木部面積は高さによらず一定だったが,transfusion tissue面積は樹冠上部ほど大きくなっていた。2年生シュートに1%酸性フクシン水溶液を吸水させた後,針葉の横断面切片を観察したところ,水が木部の仮道管からtransfusion tissueを経て葉肉細胞に拡散していく様子が確認され,transfusion tissueに水が滞留,貯蔵される可能性が考えられた。高木の秋田スギの樹冠上部の葉では貯水機能を優先した物質配分によって水ストレスが緩和され,光合成などの生理機能が維持されていると考えられる。


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