| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-040 (Poster presentation)
フタバガキ科は東南アジア熱帯低地林のリン(P)濃度の低い土壌で優占できる樹種であり、Pの吸収を促進する外生菌根(EcM)を形成する。フタバガキ科は同所的に多数の種が共存しており、本研究はその理由として、樹木の成長への光と栄養塩の共役の種間変動がフタバガキ科内で大きいことが重要であり、その共役に菌根菌が関わっていると考え、その検証を目的とした。
原生林に生育する、一斉開花起源の1年生コホートに属するフタバガキ実生6種を調べた。各種10個体を掘り起し、バイオマス(成長速度)、バイオマス配分、葉内P含有量、EcM形成(根端のEcM形成率と、6種中2種の根でエルゴステロール濃度)を測定した。また、環境条件として、実生近傍の光強度、土壌pH、全P濃度、全N濃度を測定した。これらの測定結果から、フタバガキ実生の成長とEcM形成に対する環境条件の影響を推定した。
過去の研究で光応答的だとされた種と耐陰的だとされた種で、対照的な結果がみられた。光応答的な種は光強度の増加により成長速度とEcM形成が増加した。また、バイオマス配分と葉内P含有量は環境条件の変化に応答しなかった。対照的に、耐陰的な種は光強度が増加しても成長速度とエルゴステロール濃度が増加しなかった。ただし、耐陰的な種間のEcM形成率とバイオマス配分では、環境条件の変化に対して異なる応答がみられた。
以上の種間差は生態的能力に大きな違いがあることを意味し、その違いがフタバガキの同所的な多種共存に重要だと考えられた。また、光応答的な種は、栄養塩要求度が高まると考えられる高光下でEcM形成が増加した。対して、栄養塩要求度が常に低いと考えられる耐陰的な種はエルゴステロール濃度が常に低かった。そのため、菌根菌は光応答的な種の高いP要求性を補償し、P欠乏環境の高光下での高い成長率を可能にすると考えられた。