| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-045 (Poster presentation)
植物の光合成機能と水分吸収機能は密接に関係している。植物は土壌から根を介して水の吸収を行い、葉の気孔での蒸散により茎内部の道管や仮道管内を通して水を引き上げることで植物体全体に水の輸送を可能としている。水分吸収/通導機能が不十分なときに気孔を開くと、植物体内の水が蒸散によって大量に失われてしまう。シダ植物は、およそ3億年前にコケ植物から進化し根や仮道管のような水輸送に関する組織を大きく発達させることで初めて様々な陸上環境に適応し、その後、現在に至るまで種子植物に淘汰されることなく生き残っている。そこで今回は、進化の過程で林床や湿地・樹上などの様々な環境に分化しているシダ植物の種を選んだ。本実験では、シダ植物内でも原始的な種とより進化した種との間での維管束系の形態的特徴、および水分輸送能力や光合成機能を比較することで、種によって異なる水利用が光合成機能にどのように影響しているかを調べた。その結果、茎断面での維管束系の形態や大きさが種によって大きく異なっているのが確認された。比較的原始的な種では仮道管直径や気孔コンダクタンスが小さく、それに伴い光合成能力も低いことが明らかとなった。逆に、進化/分化により環境に適応した種では維管束当たりの仮道管が占める面積比が大きくなり、同時に最大光合成速度が増加した。また、最大光合成速度が高いものは気孔コンダクタンスも高い傾向にあった。これらのことから茎内部での水輸送組織が発達すると、根から植物体への十分な水の供給により葉の気孔を十分に開くことが可能となったと考えられる。その結果、葉でのガス交換増加により二酸化炭素を大量に葉内に取り入れることで光合成が増加したと考えられる。