| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-049 (Poster presentation)

ブナ科樹木萎凋病におけるアカガシとマテバシイの防御物質の同定

*原 若輝(筑波大学・生物資源),山路 恵子(筑波大学大学院・生命環境),市原 優(森林総研 関西)

ブナ科樹木萎凋病は九州から青森県までブナ科樹木の大量枯死を引き起こしており重要森林樹木病害の1つである。ブナ科樹木種間では抵抗性に差がありカシ類、シイ類、コナラ、ミズナラ(Quercus crispla)の順で生残率が高い。市原ら(2010)によりミズナラのRaffaelea quervivora(ナラ菌)に対する抗菌物質が2,6-ジメトキシベンゾキノンである事が同定されているが、その他樹種についてはまだ解明されていない。以上を踏まえ、本研究では抵抗性の高いアカガシ(Quercus acuta)とマテバシイ(Lithocarpus edulis)に着目しその抗菌物質を確認・同定する事を目的とした。また、本研究はJSPS科研費25292097の助成を受け実施した。

2013年7月に森林総合研究所関西支所の苗畑にて、アカガシとマテバシイにナラ菌を接種し30日後に伐採した。伐採後、ナラ菌接種区と未接種区(対照区)における変色部と非変色部を切り分けそれぞれ100 % MeOHで抽出した。抽出物を濃縮した後、酢酸エチル層と水層に分液し、得られた酢酸エチル層を抗菌活性試験(Cladosporium herbarum)を用いたTLCバイオオートグラフィー)に供した。

アカガシとマテバシイの酢酸エチル層には変色部において非変色部と比べて強い抗菌活性が確認され、両樹種とも供試量(新鮮重量0, 50, 100, 200, 400 mg相当量)が増加するにつれて高活性を示した。本活性にはアカガシとマテバシイの間で顕著な差は見られなかったが、マテバシイの方がより明瞭な抗菌スポットを示した。現在、マテバシイの抗菌物質の分離・精製を進行中である。


日本生態学会