| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-050 (Poster presentation)
森林の林冠は光強度や水環境などが異なる多様なハビタットを提供しており、着生植物はそれらの環境に応じた形質を獲得して適応していると考えられる。そのため,着生植物種を形質的特徴によって分類した機能群は林冠内でそれぞれ異なる分布パターンを示すと予想される。本研究では、着生植物インベントリーデータを用いて維管束着生植物を形質的特徴に基づいて機能群に分類し、種のハビタット嗜好性を示すデータと照合することによって各機能群の生育環境への応答を検討することを目的として研究を行なった。
使用したインベントリーデータは、タイ北部ドイインタノン国立公園内の熱帯山地林において2009年に作成された。出現種を形質的特徴によって分類し、各機能群に属する着生植物の出現頻度を、ハビタットの嗜好性によって分類した群集タイプごとに算出した。
出現種は、生活形、葉の常落性、根茎の形状、貯蔵器官の有無などの形質的特徴によってシダ植物では3個、種子植物は10個の機能群に分類された。各機能群と、ハビタット嗜好性を示す群集タイプとの照合から、シダ植物については、常緑のものは林冠の上部で、落葉のものは林冠の中部以下で多く出現した。また,種子植物については、落葉性草本は主に林冠の中部以下に出現した。常緑性草本は林冠内のすべての部分に出現し、林冠上部で特に出現頻度が高くなる傾向が見られた。常緑性木本は林冠中部と林冠上部で高い出現頻度を示した。CAM植物は,林冠下から林冠の中部,上部へと移るにしたがって出現頻度が増加した。これらの結果から、着生植物の形質的特徴によって分類された機能群ごとに異なる林冠内分布パターンを持つことが明らかになり、機能群とハビタット特性の関連性を示唆した。