| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-052 (Poster presentation)

シロイヌナズナジェノタイプ 間の競争におよぼす高CO2の影響

*今野晋太朗,小口理一,尾崎洋史(東北大・生命),松島野枝(国立環境研),河田雅圭,彦坂幸毅(東北大・生命)

植物競争は、群集構成種の決定要因の一つであり、競争のメカニズムの理解は種の分布や群集の構成の理解につながる。大気中のCO2濃度上昇は、光合成や成長の増加などを通して植物に多大な影響を与えるが、種によってその応答にはばらつきがあり、競争関係もCO2の影響を受けるかもしれない。本研究では、シロイヌナズナの多数のジェノタイプを同時に競争させる実験を通して、「高CO2環境は競争の優劣を変えるのか」、「競争の優劣を決める形質は何か」を明らかにすることを目的とした。

本研究では、孤立個体の成長解析実験によって形態・生理機能についての形質情報が明らかにされているシロイヌナズナの20ジェノタイプの種子を10個ずつポットにランダムに蒔き、二つのCO2濃度(400・800 ppm)×二つの栄養塩濃度で育成する競争実験を行った。競争条件で36日育成したあとに個体の生重を測定し、DNAマーカーによるジェノタイピングを行った。各ジェノタイプの個体生重の合計値を競争の優劣の指標とした。

線形混合効果モデル解析の結果、ジェノタイプの生重合計値はCO2×ジェノタイプの交互作用の影響を受けており、CO2処理によって優劣が変化していたことが明らかとなった。形質との相関解析では、高CO2環境においては生育初期段階において葉面積あたりの光合成能力を高めることに関連する形質をもつジェノタイプが有利であることが示唆された。一方、通常CO2では根の呼吸速度と生重合計値との相関が優位であった。以上の結果から、高CO2により競争環境で有利となる性質は変わり得るものであり、将来の環境では現在とは異なる競争が起き、群集の種構成が変化する可能性があることが示唆される。


日本生態学会