| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-053 (Poster presentation)
形質多型は様々な生物に見られる現象であり、異なった表現型がどのように自然個体群内や種内で維持されているのかを理解することは、生態学および進化生物学において重要な課題である。特に生産者である植物の形質多型は、植物を利用する動物群集の多様性や個体群動態を決定する主要因となる。我々は同一集団内のオオイヌタデにおいて、葉にトリコームが密生している有毛型とトリコームを全くもたない無毛型の二型が存在することを発見した。トリコームの主な機能としては、葉の乾燥防止や強光阻害、被食防御などが知られているが、予備実験において、オオイヌタデの葉のトリコームには葉の乾燥防御効果や強光阻害効果はみられなかった。そこで、本研究では、オオイヌタデのトリコームには被食防御効果があると仮説を立て、主要な植食者であるイチゴハムシとクサイチゴトビハムシを用いた室内での選択および非選択摂食試験により検証した。その結果、イチゴハムシは無毛型を選好して摂食し、有毛型は非選択試験においてもほとんど摂食しなかった。クサイチゴトビハムシは選択実験では無毛型を選好して摂食したが、非選択実験ではどちらの表現型も摂食した。また、有毛型と無毛型を同一条件下で栽培した結果、成長速度や、花穂数、種子生産量に違いがみられたが、両者を同じポットに植え競争させると両者の種子数に有意な差は見られず、トリコームのコストは検出されなかった。また植食者存在条件下における栽培実験では、有毛型のほうが被食量は少なく、相対的に無毛型よりも成長量は多くなった。このように、有毛型と無毛型の有利性は競争者の存在や植食者の存在によって異なる事が明らかになった。以上の結果を踏まえてオオイヌタデの有毛型と無毛型の成長戦略を比較し、表現型多型の維持機構について考察する。