| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-054 (Poster presentation)
植物の特性は種間で大きく異なることが知られている。しかし、各特性はランダムにばらついているわけではなく、特性のばらつきには規則性がある。例えば、葉特性に関しては、光合成能力が高い種ほど、葉重あたり葉面積や窒素濃度が高く、葉の寿命が短い、といった傾向があり、葉特性のばらつきは一本の軸に収斂することが知られている。このような研究は茎や繁殖器官についても多く行われているが、根についてはその観察の難しさから他器官ほどには進んでいない。しかし、いくつかの先行研究においては、一部の根特性に葉特性との相関があることが示されている。ところが、根の最も重要な機能である栄養塩吸収について生理的な吸収速度を測定し、他特性と比較した研究はほとんどない。本研究では、無機態窒素吸収速度を含めたさまざまな葉・根特性を測定し、それらの中でどのような収斂現象が起きているのかを明らかにすることを目的とした。
材料として落葉木本4種・常緑木本4種・草本3種を用い、最大光合成速度や無機態窒素吸収速度、葉・根窒素濃度、葉・根表面積、器官ごとのバイオマス分配割合を測定した。無機態窒素吸収速度は、根切片にアンモニウム態あるいは硝酸態の15Nを与え、吸収量を測定することで決定した。
その結果、葉特性内では先行研究同様の収斂現象と機能群差が確認されたが、根特性内では両者とも確認されなかった。また、根表面積と葉特性の間に相関は見られたが、期待していた機能的収斂は確認されなかった。無機態窒素吸収については、アンモニウム態と硝酸態とで異なった傾向も見られた。
本研究より、葉特性の収斂と根特性のばらつきの傾向は必ずしも一致しないこと、根特性は葉のように一本の軸に収斂するということはないことが明らかとなった。この結果には葉と根における戦略ニッチの多様性の違いが反映されているのかもしれない。