| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-056 (Poster presentation)
本研究調査地である鉱山環境の土壌は、高濃度の重金属(Cu, Pb)を含んでおり、福島第一原子力発電所由来の放射性Csが検出されている。このような環境下に自生する植物からは、重金属等の金属元素や放射性Csを蓄積する種が見つかっており、そのうち数種の植物は、根部に内生する細菌によって、それらの蓄積が促進したことが確認されている。そこで本研究では、鉱山環境に繁茂する種として知られているヘビノネゴザを研究対象に、金属元素及び放射性Cs蓄積能を調査し、その蓄積能に内生細菌が関与しているか明らかにすることを目的とした。
ヘビノネゴザが生育する地点の土壌は、既往の結果と同様に、高濃度の重金属(Cu, Pb)を含有し、低濃度ではあるが放射性Csを含有していた。その土壌を反映して、ヘビノネゴザは金属元素(Cu, Pb, Al)を高濃度に蓄積し、放射性Csを地上部に移行させていた。また、これらの金属元素の蓄積には、地上部ではクロロゲン酸が、主に根茎部及び根部では縮合型タンニンが解毒物質として関与している可能性が示唆された。ヘビノネゴザの根部より分離された内生細菌からは、Al及びFeを可溶化するシデロフォアを産生した株が確認され、中でも高い産生能を示した株はBurkholderia属であると同定された。シデロフォアは、様々な金属元素を可溶化し、植物の蓄積に寄与していることが報告されている。また、土壌中の粘土鉱物からCsを溶脱するシデロフォアも報告されている。以上の結果から、本研究調査地に自生するヘビノネゴザの金属元素(Cu, Pb, Al)及び放射性Csの蓄積に内生細菌が促進的な働きをしている可能性が示された。