| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-058 (Poster presentation)
大気CO2濃度は今後も上昇を続け、さらなる温暖化をもたらすと考えられている。木本はサイズが大きく寿命が長いため、光合成を通した大気CO2濃度上昇の緩和効果が期待されている。木本の高CO2応答についてはこれまで多くの研究が行われているが、その応答には大きな幅がある。そのため常緑と落葉という機能型の違いによる高CO2応答の類型化が試みられてきたが、各機能型においても高CO2応答には大きなばらつきがあり、機能型による類型化の可不可について結論には至っていない。高CO2応答のばらつきの原因として、研究によって生育環境や栄養条件が異なり、使用されている種もまちまちであることが挙げられる。そこで、生育環境や栄養条件を統一して栽培を行い、同じ科に属する常緑樹と落葉樹の間で高CO2応答性を比較することで、機能型による高CO2応答性の類型化の可能性を検討した。
5科10種の常緑樹と落葉樹を大気CO2と高CO2濃度下で2年間栽培し、光合成速度と個体成長を測定した。光合成速度は高CO2によって促進されたが、光合成能力の低下(ダウンレギュレーション)によって促進効果が減少していた。光合成速度の高CO2応答に、常緑樹と落葉樹で違いはなかった。個体成長はほとんどの種で高CO2によって増加したが、クスノキ科のみ常緑樹と落葉樹ともに増加が見られなかった。これはこれら2種の個体葉面積が高CO2で他の種と比べて大きく減少したためであった。
以上から、遺伝的に近縁な種間では、機能型による高CO2応答性の違いは小さいことが示唆された。木本の高CO2応答の種間差は、常緑と落葉という機能型の違いよりも、種による遺伝的な性質の違いに大きく依存していると考えられた。