| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-059 (Poster presentation)

乾燥地に分布する匍匐性樹木の夜間の樹体内の水移動

*青木万実,松尾奈緒子(三重大院・生資),久堀史暁(岡山大・農),楊霊麗,三木直子(岡山大院・環境)

乾燥地植物にとって水の獲得や保持は重要な問題であり,そのためのメカニズムは多様である.そのひとつに,主幹から地表面を這うように匍匐枝を伸ばし,主幹からは地下水面近くまで主根を,匍匐枝の途中からは土壌浅層に不定根を伸ばす形態的適応が挙げられる.既往研究により,中華人民共和国内蒙古自治区・毛烏素沙地の優占在来種である臭柏(Sabina vulgaris Ant.)は土壌浅層が乾燥しているときは主根が土壌深層の水を吸収して匍匐枝先端にまで供給しており,さらに夜間に土壌深層から浅層への根を介した水の輸送(hydraulic redistribution,HR)が起こることが示唆されている.本研究では臭柏の夜間における主根と不定根間の水動態を明らかにするため,主根と不定根を別のポットに分けて植栽した苗木3個体を対象として不定根側の土壌を乾燥させ,主根側にのみ重水を与える実験を行った.重水を与えてから12時間後の茎内水や不定根内の水,不定根側の土壌水等の酸素安定同位体比(d18O)を測定したところ,1個体については不定根内の水は重水の値に近づいていたが,不定根側の土壌水は変化しなかった.従って,主根が吸収した重水が不定根まで達していたことが示唆された.また,匍匐枝の主根~不定根間と不定根~先端間の樹液流速度をHeat Ratio法を用いて測定した結果,全個体で夜間に主根側から不定根側へと不定根から先端への水の流れがあり,さらに1個体については不定根先端間の流れが止まった後も主根から不定根へと流れていた.2つの手法の結果から,夜間の主根不定根間の水動態として土壌浅層の乾燥時には主根から水を吸収して,匍匐枝先端の葉まで供給していることが確認できた.また1個体については先端の葉への供給後に主根から不定根に向かって水が流れていることが示唆された.


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