| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-062 (Poster presentation)

ブナ科植物の葉と種子に関する種間比較

*児玉みなと(京大・農),北島薫(京大・農)

窒素は多くの生態系内で植物の成長や生産を制限する栄養素である。種子中の窒素は芽生えの初期生長に大きな役割を果たし、種子の重量や母樹の葉の光合成能力の差によって種子中窒素濃度に差が生じる。しかし、種子の大きさや葉の形態と種子中窒素含有量に関する研究は十分になされていない。ブナ科植物(Fagaceae)は温帯から亜熱帯までの広い地域において、森林を構成する重要な樹種である。また、樹種によって落葉・常緑の違いがあり、種子の大きさや葉の形態(面積や厚さ)も様々である。この研究の目的は、日本に生息しているブナ科植物14種の種子中窒素濃度と種子や葉の様々な形質との関係を明らかにし、その理由について考察することである。

本研究では、ブナ科樹種14種(落葉樹5種・常緑樹9種)を対象にし、葉や種子は関西から中国地方にかけての5点から採取した。葉は面積、厚さ、乾燥重量、窒素含有濃度を測定し、種子は子葉と殻を分離し、乾燥全重量、子葉乾重量、殻の乾重量、子葉の窒素含有濃度を測定した。

その結果、ブナ科植物14種において、平均種子乾燥重量・子葉乾重量が大きい樹種の方が、子葉中窒素濃度も高い傾向にあることがわかった。また、葉の厚さ・LMA(葉乾重量/葉面積)が小さい樹種の方が子葉中窒素濃度が高かった。本研究で扱った14種のブナ科植物内では、落葉樹種と常緑樹種で、平均の種子乾重量・葉の厚さ・LMA・種子中窒素濃度に差が生じているという傾向があった。このことより、ブナ科植物の種子の大きさや種子中窒素濃度は、落葉樹・常緑樹といった葉のフェノロジーや生長戦略と関連して進化適応してきたのではないか、ということが考えられる。


日本生態学会