| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-065 (Poster presentation)
動物媒花と異なり風媒花では、花粉生産量の増加に伴って直線的に交配機会が増加すると予測される。また、草丈が増加し花粉のリリース点が高くなると、花粉分散距離が伸びて交配機会が増加すると予測される。これらの予測は、主に木本で検証され、支持されてきた。しかし、どちらの形質が交配機会(オス繁殖成功)により大きな効果を与えるかは未だ明らかになっていない。
本研究で我々は、自家不和合性の一年生風媒草本であるブタクサ Ambrosia artemisiifolia の実験集団(N=43)を用いて、草丈よりも花粉生産量がオス繁殖成功により大きな効果を与えることを示す。我々は、実験個体において草丈と雄性花序長の合計(花粉生産量指標)を計測した。次に我々は、マイクロサテライトマーカーを用いて、収穫した種子の父性解析を行った。さらに、これらの計測値と父性解析結果を元にGLMを用いた選択勾配分析を行い、オス機能を介して2形質にかかる自然選択の相対的な効果の強さを比較した。その結果、花粉生産量指標の増加に伴ってオス繁殖成功が増加する一方で(選択勾配β = 0.289, P < 0.001)、オス機能を介して草丈にかかる自然選択は検出できなかった(β= 0.081, P = 0.280)。また、隣接個体数が多いほどオス繁殖成功は増加した(標準化偏回帰係数 = 0.163, P = 0.035)。
今回の結果は、花粉生産量を増やすことで近隣個体間での交配機会を増やす効果が、草丈の効果を上回ることを示している。前者の効果は、群落を形成する草本植物では広く期待される。しかし、密度が低く、隣接個体数が少ない種では、草丈の効果がより大きいかもしれない。今後は、隣接個体の密度を考慮に入れた研究が必要である。