| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-066 (Poster presentation)
ポリネーターは蜜量のばらつきを嫌うことが知られている。花あたり複数の距を持つ植物は“花内の距間で蜜量をばらつかせる”という戦略が可能かもしれない。このため、花内の蜜量ばらつきの程度により、ポリネーターが訪花あたりで吸蜜する距の数が変化し、送粉効率に影響する可能性がある。
本研究では、雄期と雌期の違いに着目した。雄期では、ポリネーターの訪花あたり滞在時間は長いと、花粉持ち去り数が多くなり有利であると考えられる。一方雌期では、滞在時間は短いと、ポリネーター1匹あたりの花粉受け取り数は少なくなり、花粉親数が増え有利であると考えられる。このため、雄期では訪花あたり滞在時間を長く、雌期では短くする戦略を取ると考えられる。
調査対象のオオヤマオダマキは、花あたり距を5つ持ち、雄性先熟の両性花を持つ。本研究では“オオヤマオダマキは花内で蜜量ばらつかせ、ポリネーターの訪花行動を制御する”という仮説の下、距あたりの蜜量、ポリネーターの訪花行動、訪花行動と繁殖成功の関係を調査した。以下のような結果が得られた。
・花内の蜜量ばらつき:最も蜜量が多い距は、最も少ない距の雄期では6.37倍、雌期では6.83倍
・花あたり総蜜量:雄期>雌期
・訪花あたり吸蜜された距の数:雄期>雌期
・訪花あたり滞在時間:雄雌差なし
・花あたり訪花頻度:雄雌差なし
これらの結果から、以下のことが示唆された。
・雄期雌期共に花内で蜜量はばらついている
・雌期では花あたり総蜜量を少なくして、ポリネーターが全部の距で吸蜜する前に立ち去らせる
以上から、花あたり総蜜量がポリネーターの訪花に影響を与えると考えられる。