| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-068 (Poster presentation)
有性生殖を行う生物にとって配偶子を適したサイズに調節することは、自らの配偶様式がもたらす適応度の上昇を享受する上で重要である。海産緑藻エゾヒトエグサは、雌雄配偶子にわずかなサイズ差が存在し、そのサイズ差は、配偶子嚢の内部で起きた配偶子形成過程における同調的な細胞分裂の回数の違いが生み出すとされている。しかし、配偶子嚢サイズが一定でないときでも、雌雄配偶子の異型性は保たれているのだろうか?本研究ではエゾヒトエグサの配偶子嚢サイズと配偶子形成過程における同調的な細胞分裂回数の関係を調べ、配偶子生産に関する新たな知見の獲得を試みた。
北海道室蘭市で成熟した雌雄配偶体を採集し、配偶子と配偶子嚢を得た。配偶子と配偶子嚢の体積を測定し、それぞれの配偶体から得た集団の平均値を比較した。また、配偶子嚢はひとつずつ内部で起きた細胞分裂の回数を調べ、体積との関係を統計的に解析した。
全ての雌雄配偶子の間で体積に有意な差が見られた。配偶子嚢の体積は雌雄に関係なく一定ではないことが分かった。体積の大きな配偶子嚢は配偶子形成過程の細胞分裂の回数が多くなる傾向があることが分かった。
配偶子嚢のサイズがばらついていたにも関わらず、雌配偶子のサイズは常に雄配偶子より大きくなる理由は、大きい配偶子嚢ほど分裂回数が多いためだと考えられる。従って、エゾヒトエグサにおいては、それぞれの配偶体の中で配偶子嚢のサイズに関わらず配偶子が適したサイズに近づくよう配偶子形成過程における同調的な細胞分裂の回数を調節するメカニズムがあることが示唆された。これによって雌雄配偶子のサイズが決められていると考えられる。